Misaki8103’s blog

本や映画、ゲームなどの感想、日々の体験を書き綴るブログです。

『作家の収支』読了

『作家の収支』読了。小説家・森博嗣氏の、これまでの作家生活の収入から支出までを数字とともに明らかにした新書。

森博嗣氏の作家としての収入は、原稿料・印税・著作使用料の3つが柱らしい。原稿料はいまだ紙の原稿(1枚400文字)単位で計算されており、印税はおおよそ売上の10%ほどが作家の取り分となるそうだ。その他、講演やメディア出演などの仕事もあるらしいが、本職の物書きの時間の確保などのために、森博嗣氏はほとんど関わっていないとのこと。

森博嗣氏は、自身をベストセラー作家ではなく、マイナー作家だという。「スカイ・クロラ」シリーズでさえ、映画化された年には十数万部売れたが、売上ゼロの年もあり、何年もかけて35万部に届いたという。それでも、今も年に数千万円の収入があるのは、ひとえに多作であり、それぞれが長く読み継がれていることによるようだ。

消費者の好みが細分化し、メジャーで大きなヒットが見込みにくい状況になったが、費用があまりかからず小ヒットでペイできる、マイナーな商売のひとつの作家は、変わらず仕事をしていけるだろうという。ただ、多様化に対応し、小さな利益を積み重ねるためにも、多作である必要はあるという。

スランプに陥らないためには、感情で中断されることのないよう、仕事として、金の種として関わること、何をおいても多作であれ、など身となり血となったアドバイスも書かれている。

収支の支の支出は、森博嗣氏の執筆スタイルが、資料を用意しない、極力ひとりで作業を完結らしいので、仕事上の費用はほとんど発生せず、人付き合いも少ないので交際費もほぼ発生せず、その他は趣味に使うくらいで、収入に比べたら支出は少ないらしい。

小説家の一般的な収支の具体的な数字だけでなく、収支の全てに貫かれている、人付き合いも含めた関心のない事、無駄な事を極力しない合理的な森博嗣氏の姿勢もうかがい知れる面白みのある本だった。

 

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作家の収支 (幻冬舎新書)

作家の収支 (幻冬舎新書)

 

 

小説家という職業 (集英社新書)

小説家という職業 (集英社新書)

 

漫画『アイアムアヒーロー』1~20巻読了

漫画『アイアムアヒーロー作品詳細『アイアムアヒーロー』 | ビッグコミックスピリッツ公式サイト -スピネット-)』1~20巻読了。現代日本を舞台にしたパニックアクション漫画。

はじめは、冴えない中年男性の日常物語かな?と思いきや、非日常の中でのサバイバルアクションとなり、バトル漫画風も混じり、当初からは想像もできない「モノ」が出現したりと、ひとつのジャンルに括りにくい漫画と思った。

主人公・英雄と比呂美の恋愛が物語の柱の一つかと思い読み進めたが、エログロに混じり執拗に性愛の描写がくり返し描かれ、性愛の象徴を思わせる形の「モノ」が最終版に現れるに至って、もう少し括りの大きい男女の性愛の根源のようなもの、が通底にあるドラマなのかなと思った。

中盤以降に、それまでのリアルな枠組みを壊すようなキャラクタが出現し、やや物語の緊張感を緩める展開があり、また、青年誌特有のエログロバイオレンスものの類型ぽさも感じたが、それらを超える画の描きこみや、女性とふれあう時の切なさのような感覚がとても上手く表現されている漫画とも思えた。

物語は、あと数巻で完結するだろうクライマックスに入っており、どう大風呂敷を畳むか、最後のひとコマをとても楽しみにしている。

 

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『モナドの領域』読了

モナドの領域』読了。筒井康隆氏による、ミステリSF。

ある日、河川敷に女の片腕が、公園に女の片足が見つかる。時を同じくして、ベーカリー店では、河川敷の女の片腕に瓜二つなバゲットが売り出される。物語は、どうして腕が現れたのか?を、形而上学的に、または衒学的に煙に巻かれるように、明らかにされていく。

2015年末現在の風俗や流行りごとが散りばめられた文章は楽しく、200頁強の物語は、あっという間に読み終えられた。物語の構造自体を話すことがネタバレになってしまうので、それには言及できないのだが、夢オチ?を読まされた時のような肩透かし感が、物足りないというのではなく、良い意味の悪ふざけ感を伴ってくだけているのが面白く感じられた。そこが嫌だなと感じる人も居るだろうが、そこが筒井康隆氏らしい小説なのだとも思った。

現実がSFを超えて陰鬱としていると感じられる昨今なので、筒井康隆氏の悪ふざけ、カラッとした物語を読んで、少し胸のつかえが下りたように感じられた。賛否両論あるだろうが、良いSF小説と思えた。

 

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モナドの領域

モナドの領域

 

PSVita『勇者死す。』クリア

PSVita『勇者死す。』クリア。魔王を倒した勇者が、やり残したことのため、5日間のみ復活し目的を果たそうとする、マルチエンディングのロールプレイングゲーム

 

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天使ユリアに導かれてゲームは始まる

 

魔王を倒した後なので、レベルは最高から始まり、時が過ぎると共に勇者は弱くなっていく。その間に、自分自身の目的=復活し記憶がなくなったために思い出せない最愛の「彼女」探しをしつつ、かつての仲間や人々の望みをかなえながら物語は進む。その結果が5日後の自分の葬儀に表れ、幾度も5日間をくり返すことで、徐々に「本当のこと」が見えてくる。

 

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幾度もよみがえる魔王

 

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幾度もくり返す5日間

 

桝田省治氏が手がけたゲームなので、あれ?と思う引っかかりのあるセリフ回しがとても上手く感じた。声優によるボイス付きではあるが、いわゆる萌声に振りすぎない声の演出も良いと思えた。くり返す輪廻やドロドロした恩讐など、桝田節全開のシナリオとゲームシステムなので、「リンダキューブ」や「俺の屍を越えてゆけ」を楽しめたファンは、今作も楽しめると思う。

ゲームジャンルとしては、RPGとうたわれてはいるが、最高レベルから始まり経験値を積む楽しさが少ないことと、RPGとしてはゲームボリュームが少ないことから、決められた期限内にいかに効率よくフラグを回収するかという、アドベンチャーゲームぽくも思えた。フラグイベントがランダムでしか現れないものもあったのは、やや難しく感じた。そういうところを、クセのある面白みのあるゲームと思えるか否かが、楽しめるか否かの境目かと思った。

グラフィックは、3Dポリゴンキャラクタの造形やモーションが可愛らしくよく出来ていて、敵キャラクタも含め、大画面でも見てみたいなと思えた。

くり返し前提のゲームで、1周にかかる時間は2~3時間ほど。上手いひとなら、5~6周でトゥルーエンドを迎えられると思う。なので、ゲームボリュームは少ない。けれども、クセのあるシナリオは面白く、物語の余白を想像させるテキストはとても上手い。自分は、1日1~2時間ほどゲームするというスタイルだったので、ゆっくりゆっくり物語を楽しめ、ちょうど良い長さのゲームだったと思えた。

最後の最後、最愛の「彼女」と出会えたラストは、いつまでも残る、心地良い余韻にひたれた。最愛の人というのは、会うたびに違うと思える人、違う人なんだと思わされる、胸に爪あとの残る最後でもあり、印象に残るゲームのひとつになった。

 

 

『脳が認める勉強法』読了

『脳が認める勉強法』読了。脳や心理学などが専門の新聞紙記者による、科学的で効率のよい学習法が書かれた本。学習=記憶と捉え、記憶に関わる脳の働きが説明され、それを基にどのような学習方法・記憶方法が最適なのかが紹介される。

記憶には、保存とそれを検索する機能がある。保存された情報は、検索し思い出すたびに、脳内の他の情報との関連性が強まったり、新たな情報が加わったりして、強い記憶となり容易に検索できるようになる。

記憶の過程では、いったん全て覚えた後に、それらはふるいにかけられ、自分が欲する必要な情報のみが強く保存される。思い出す=記憶を検索する時には、それを惹起する手がかり、記憶に紐付いた背景情報があると、より容易に思い出せる。静寂で何もない場所よりも、音や周りの風景や空気感など背景情報のある場所で記憶すると、記憶の検索がしやすくなるという。

また、一度に詰め込まず学習時間を幾度かに分散することや、勉強を始める前にテストを課すことも学習に有効だという。分散は、覚えるために忘れる=不要なことをふるいにかけ忘れたり、思い出すことをくり返すことで検索機能が強くなる。事前テストは、その後の勉強で覚えるべき事への関心や集中を高め、記憶の効率がよくなるという。

問題を解決するための、ひらめきや洞察力を得るための方法も書かれている。まず、行き詰まるまで考え抜き、一旦それを中断し離れる。離れている最中も、脳は、関心のあることや解決できていない問題に関連する情報を無意識に集め、答えを出そうと働く。そうして休み、一歩離れ俯瞰すると、ある時ひらめきが降りてくる。

多様な状況の実戦に応じる学習法も書かれている。解法が同じ答えを連続でこなすのではなく、解法の異なる問いをランダムに解き、数ある解法を自分で選ぶ体験を積むことが役に立つという。そうすることによって、多様な状況に対処する=その場で解法を選ぶという訓練を積むことになり、より応用の効く学習になるらしい。

目利きやプロ選手が持つ「目利き」能力の取得方法についても記載されている。目利きは、目の前の多くの情報と過去に得た有用な情報を照らし合わせ区別し、必要な情報のみを瞬時に得ることができる能力を言うらしい。その能力を得るには、情報を選り分ける訓練を機械的に行う知覚学習が効果的という。瞬時に選り分ける、じーっと意識的に見ずとも、無意識が情報を選別してくれるようになるらしい。

睡眠は、覚醒時に得た情報の整理と定着に大きく寄与する大切な機能であるとの記載もあった。

この本に記載された記憶に関する多くの知見は、ある程度の年齢の人ならば、体験的に知っていることも多いかもしれない。それでも、科学によって裏付けされた事柄を具体的なエピソードと共に読むのは面白く、この本自体が、本の中で幾度も説明される「記憶を呼び起こすきっかけ」になってくれたと思う。

 

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脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!

脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!

 

『はじめての不倫学』読了

『はじめての不倫学』読了。不倫の内実を学問のように体系だてて学んでみよう、という本。

生物学的に婚外性交渉を行わない種の方が希少であること、人類の歴史的に見ても一夫一妻制が名実ともに確立されたのは、ごく最近のことであることが語られる。どうしても無くならないことであるなら、はしかのように予防接種を行う=事前に不倫の予備知識を得ておき、うぶであるがゆえの失敗を未然に防ごうという趣旨で、不倫の実際が記述されている。

古くは雑誌を媒体にした不倫交流会から、今風のSNSや出合い系、Webサイト上の高級交際クラブなどを、利用した男女の体験談を交え、日本での婚外性交渉に至るプロセスを紹介している。また、オープンマリッジやクーリッジ効果、ポリモアリー(複数愛)をキーワードにして、アメリカでの多夫多妻制の試みの紹介にもページが割かれている。

無くならないならば耐性を付けるために知識を得ていよう、という趣旨で書かれているためか、上記した不倫に関する記述が、やや肯定ぎみに案内されている感もした。読む人によっては、嫌悪感を得るかもしれない。野次馬的に目を通し真似をしようという人もいるかもしれないが、そこは著者がそういう人も居るだろうと否定はしていなかった。不倫を学問に結びつけるのは、成功しているとは言いがたく、読む人を選ぶクセのある本だと思った。

 

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はじめての不倫学 「社会問題」として考える (光文社新書)

はじめての不倫学 「社会問題」として考える (光文社新書)

 

『お金が教えてくれること』読了

『お金が教えてくれること』読了。起業家の家入一真氏(KAZUMA IEIRI)が、幾つもの会社を興し体験して得たお金に対する考え方をまとめた本。

家入氏は、実父が破産をしてしまったくらいに貧しい家庭だったらしい。その頃の体験をバネにペパポ(GMOペパボ株式会社)上場を果たしお金を得るが、コンプレックスが負にも作用してしまい、ひと月の呑み代二千万円など、金持ちのステータスを満たすために多くを使ってしまった時期のことが書かれている。

お金があれば選択肢は増えるしお金で時間も買える、お金で先取りした時間を使い経験を早くに得た方が良いなど、ショートカットにお金を使うことを説き、自分の状態を知りまずは最低限の必要額を知ること、ひとつの場所や物に依存しすぎないこと、小さく初めて小さく稼ぐこと、何でもいいからまずは始めてみることなど、個々人の起業の勧めも書かれている。

そういった個々人の活動に資するサービスを提供していますよ、という感じで、家入氏の関わるWebサービスliverty | Live in liberty. 自由に生きろCAMPFIRE(キャンプファイヤー)- クラウドファンディングBASE(ベイス) | ネットショップを無料で簡単に作成…など)も紹介されている。

家入氏の体験や知見が書かれた本だが、家入氏関連のサービスの宣伝の面も強い。とはいえ、家入氏の飽きっぽそうな性格も垣間見える、彼の面白みを知ることもできる本と思えた。

 

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お金が教えてくれること  ~マイクロ起業で自由に生きる~

お金が教えてくれること ~マイクロ起業で自由に生きる~

 

 

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